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超柔軟配線板

柔軟かつ透明な超柔軟配線板『WAVY ROLL P.W.B.』

2012年3月 実装技術(Gichoビジネスコミュニケーションズ株式会社)

1.はじめに
プリント配線板はなぜ緑色なのであろうか?
本稿をお読みの方はそんな疑問をもたれたことはないだろうか。実はプリント配線板が緑色に見えるのは、レジストの色が緑色であるためである。なお、レジストはもともとは少し乳白色の透明であって、使用に際し、緑色に着色をしているのである。
では次に、フレキシブルプリント配線板はなぜ曲がるのであろうか?
それは、柔軟特性をもった材料を用いているためであり、加えて基材の厚みが薄いためである。もちろん、基材厚が一定以上厚くなると曲がらなくなるため、基材や銅箔厚を薄くしたりすることによってフレキシブルプリント配線板が曲がるようにしているのである。現在、市場に流通している大半の電気製品ではこれらの基板が採用されており、当社においても両基板を生産・販売して企業運営を行っている。
当社は『学働悠遊』を社是としている。よって、学び、遊んだ結果から生み出されるイノベーションを目指すという基軸が社内風土として存在しているのである。今回紹介する超柔軟配線板『WAVY ROLL P. W.B.』は、これまでの価値や顧客満足を変えることを目的としながら創造的破壊をしたいという思いと同時に、イノベーションによる雰囲気を楽しみたい思いから生まれた今までにないまったく新しい基板である。

2.超柔軟配線板の特徴
1.jpg1.超柔軟
同製品のまず第1の特徴は、文字通り超柔軟であるという点である。本製品はフレキシブルプリント配線板と比べ高い柔軟性があり、かつ低反発なのが特徴となっている。また、折り畳むこともできる(写真1)。
2.透明
第2の特徴は透明度である。透明プラスチックの内部、または表面の不透明な曇り様の外観度合いを表すヘイズ値は3.4%である。よって、超柔軟配線板越しに先を透かして、向こうを見渡すことができる(写真2)。2.jpg

3.エコ
第3の特徴は、エコへの配慮である。超柔軟配線板材料と銅箔との接着は、接着剤を使用しない2層CCLであるため、接着剤からのガス発生がなく、環境に優しいものとなっている。
4.大電流対応
第4の特徴として挙げられるのは、大電流対応であるという点だ。フレキシブルプリント配線板と比べ、銅箔厚みを厚くしても柔軟な特性を損ねないため、銅箔厚を厚くして大電流に対応することができる。

5.耐熱性が高い
第5の特徴は耐熱性の高さである。フレキシブルプリント配線板と同様に、実装の熱が掛かるリフロー炉の温度でも耐え得ることができる製品となっている。

3.開発の背景
以下に筆者が以前、雑誌に執筆した文章からの引用文を挙げる。『良いものが高いのは当たり前で、様々な工法のプリント配線板を使用するのも1つの手であるが、これらを把握したうえで、通常のプリント配線板を使用するのが得策である』。これも古き良き時代の話になってしまった。時代は移り、昨今では良いものを従来品よりも同等、もしくはいかに安くできるかというイノベーションが大きなポイントである。
『はじめに』で掲げた二つの疑問について、お読みの方はどう思われたであろうか。筆者はかつて、緑色のプリント配線板についてさほど疑問には思っていなかった。しかし海外で生産する様々なプリント配線板を見た時には驚きを感じた。そこには、今では常識となっている鉛フリー色の青や赤、黄色など様々な色のプリント配線板があったからである。これを受け、その当時スケルトンの製品が流行っていたことから、早速ピンク色のプリント配線板を作成し、市場に展開した。
そしてご推測の通り、そのプリント配線板はそれなりの販売量を実現したが、生産は終了した。今から思うと生産が幕を閉じることになった理由は簡単にわかるし、現在では白色や黒色レジストなどが市場に残っているのも納得できる。
次に当社では、基材厚が厚くても曲がる配線板について、様々なエンプラ、スーパーエンプラを用いたフレキシブル配線板を作成した。これは、プリント配線板であればガラスエポキシやガラスコンポジットが、フレキシブルプリント配線板であればポリイミドがそれぞれ主流であることに対する疑問もあったからである。当時、これらエンプラを用いて市場展開できた材料は、ポリアミドを用いたフレキシブルプリント配線板である。これもまた、それなりの販売量を上げて生産は幕を閉じた。
前述の製品も含めて、これらの失敗の理由は今では明確である。技術面の簡単な理由の一つとしては、すでに市場にあるものの寄せ集めであったに過ぎないということである。すなわち、あくまで既存商品の改良であり、イノベーションはできていなかったのである。他の開発品などにおいても、10年程前までは同じようなことを繰り返していた。
その中で、本題の超柔軟配線板が生まれたのはなぜか。ユーザーニーズを捜し求め開発を行ってきた昔とは違って、開発への余裕と遊び心がこの製品を生んだのである。繰り返すが、当社の社是である『学働悠遊』の悠遊の意味を理解できてこその結果である。上述した二つの疑問を解消する基材を、自分達で樹脂配合から製法まで考えて製作してみよう、というのが開発の始まりとなっている。

4.新開発基材の仕様と一般特性
3.jpg新開発した超柔軟配線板はプレポリマを用い、透明かつ柔軟でありながら耐熱性が高く、薄くても裂けないのが特徴である。表1に、同製品の一般的な仕様を示す。基材と銅箔は接着剤を使用しない2層CCL構造で、その銅箔厚は標準で電解銅箔の35μm銅箔としている。大電流を流すために銅箔を厚くしたり、銅箔もさらに柔軟さが必要な場合には圧延銅箔への変更も可能だ。 ポリイミドの電解銅箔12μmを用いたフレキシブルプリント配線板の写真である。超柔軟配線板はポリイミドなどを用いたフレキシブルプリント配線板とは異なり、腰がなく(スプリングバックがない)、写真のようにポリイミドのフレキシブルプリント配線板と比較してもわかるように、重力で曲がるくらいに柔らかいのも、新しく開発したプレポリマの特徴の一つである。
表2は、超柔軟配線板の一般特性である。電解銅箔を使用しているため、屈曲特性の特性値が電解銅箔厚の限界値の特性となる。
4.jpg5.jpg以上のように、透明でポリイミドや液晶ポリマを用いたフレキシブルプリント配線板よりも柔軟性があり、部品実装時のリフローの熱に耐えることが超柔軟配線板の特性となっている。また、透明フレキシブルプリント配線板でありながら引き裂き強度が強く、さらに伝送特性は比誘電率が2.6、誘電正接は0.02であり、コプレナ・ウェーブガイド構造でポリイミドよりも高速伝送特性に優れている。

5.製品展開への展望
7.jpg8.jpg同製品が実際に採用されている分野は、アミューズメント分野、車載分野、照明分野、通信分野である。そして超柔軟配線板の柔軟性を活かした基板としては、写真4のように部品実装エリアと屈曲エリアを共通にして屈曲エリアのとぐろを巻いている部分で、製品の伸び縮みを行う製品、基板を折りたたんで筐体に入れ込む製品として商品化されている。 また、透明度を活かした基板としては、写真5のようにディスプレイ前面の装飾やアンテナを付随して製品の付加価値を追加した製品として商品化されている。写真5は、携帯電話の上に同製品を置いた写真である。基材が透明であるため基材自身は見えなくなり、導体配線のみが見える。すなわち目の錯覚で表面の基板が見えなくなるのである。このような用途でのニーズは多い。ガラス基板やPET基板などの透明な基板は現在も色々と存在しているが、実際に商品化するための課題も多いのが現状である。さらに同製品は、写真6のような長尺のフレキシブルプリント配線板の製作も可能である。この特徴を活かし、平面配線や立体配線(軽量かつ柔軟性も含む)を利用した製品として商品化している。その他、LED塔載製品として装飾イルミネーション、ヘッドライト・各種ライト、自動二輪関係、通信機器としては透明アンテナなどへの採用検討が進んでいる。
以上のように、従来フレキシブルプリント配線板が採用されていた代替としてではなく、まったく新しい商品としての採用が進んでいる。これが、技術面でのイノベーションであり、さらなる新商品へのポテンシャルを秘めている。

6.今後の展開
9.jpg前述10.jpgしたように、基材厚が厚くても曲がるのはなぜかという疑問も超柔軟配線板の誕生に貢献したものであるが、現在のラインアップでは、基材厚は80μmである。今後の課題の一つは、さらに厚くても曲がる基板の開発である。現在は厚い基材での柔軟写真のように(写真7)、厚くても曲がる基板を開発したことに留まっている。写真7の基材厚は1.6mmであっても充分に柔らかく、自由に樹脂を変形することが可能であるが、量産ラインへの展開はまだできていないのが課題である。さらに、今後の課題の一つとしては、同製品は樹脂が柔らかいため、両面基板を形成するための層間接続の信頼性が確立できていないという点が挙げられる。
超柔軟配線板を充分に曲げないで使用する場合であれば、層間接続のめっきと樹脂との反発は生じないが、自由に曲げると層間接続のめっき部が金属であるために硬く、樹脂との相性が悪くなり、最悪の場合はめっきが剥がれてしまう。よって、柔軟な層間めっきが課題克服のポイントである。
また最後の課題として、導体を透明にするという点がある。透明ペーストを利用したPET基板がトータルで透明になるのだが、導体抵抗が大きいため電気特性が悪く用途が限られる。また、実装ができないという欠点がある。
しかし、超柔軟配線板の導体を透明にし表面めっきも透明にすることで、真の透明基板とすることができる。当社では、これはさらなるイノベーションになると確信している。

柔軟かつ透明な超柔軟配線板『WAVY ROLL P.W.B.』

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透明基板”SPET”(Super-Polyethylene-Terephthalate)事業部の考え方

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