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直ぐに暖まるヒーター

すぐに暖まる車載向け透明ヒーターフィルムを販売開始

2022年10月 自動車用電子部品技術特集(電波新聞)

1. はじめに
シライ電子工業は創業56年となり、論語に「君子の得は風なり、小人の得は草なり。草之に風を上うえば、必ず偃す」とある。これは、上に立つ者の徳は、風のようなものであり、下にある人の徳は草のようなものであり、比喩でいい心がけ、いい習慣を大切にすれば、必ずいい風が吹き、成功に辿りつけるという意味で、創業者から学んだことである。今では創業者から経営体制も代替わりをした。それでも私が、成功に辿りつけるために新規事業に挑戦し続けて、常にいい風を吹かせようとしているのは、創業者から多くのことを学び、社会に役立てることができる能力が持てた恩義を感じていた感謝の気持ちからなのかもしれない。新規事業の商品は、車載メーカと共同開発した自動運転用部品の防曇・融雪用途の商品で、“直ぐに暖まる車載向け透明ヒータフィルムの販売開始について”としてPR情報を開示している。それでは、透明ヒータフィルムを紹介する。

2.透明ヒータの種類
透明ヒータは、製造しているメーカごとに導体の種類、基材、加工方法が異なり、各々に一長一短の特徴がある。導体の種類で大別すると下記 5種となる。
① 酸化インジウム錫化合物(ITO)
② 導電塗料(PEDOTなど)
③ 金属ナノインク
④ 金属ワイヤー
⑤ 金属箔(SPETなど)

2-①.  酸化インジウム錫化合物(ITO)
スパッタ法などでガラスもしくはフィルムにITOを成膜した透明ヒータである。この利点は、透明で電気が流れることである。しかし、透明度を保つためには膜厚を薄くする必要があり、必然的に抵抗値が高くなる。さらにITO膜が硬いため、曲げなどに対して割れる欠点がある。
2-②.  導電塗料(PEDOTなど)
ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の分散体を主成分とするPEDOTの導電塗料を用いた透明ヒータである。透明な導電塗料を印刷工法で形成できることが利点で、透過型静電スイッチから普及した技術である。ただし、経年劣化でPEDOTの抵抗値が変化する欠点がある。
2-③.  金属ナノインク
金属ナノ粒子サイズになるとバルク状態より融点が下がる特徴を活かし、基材にインクを塗布後に低温焼結し抵抗を低くすることができる利点がある。ただ、低温といっても焼結温度がまだまだ高いため、その焼結温度に耐える基材を使わなければならない欠点がある。
2-④. 金属ワイヤー
車のリアガラスのデフォッガーに代表される金属ワイヤーを、ガラスやフィルムに埋め込んだ透明ヒータである。イニシャル費が掛からないなどコスト面の利点がありヒータ実績は多い。ただし、金属ワイヤーはヒータ線が見えるので死角を利用した採用に限られる。
2-⑤. 金属箔(SPETなど)
透明な基材と金属箔をラミネートして、金属ナノインクよりも抵抗値が低いことが利点の透明ヒータである。金属箔は厚膜で金属配線が不透明のため、薄膜のように透明にすることができない。
このように透明ヒータには利点と欠点があり、製品要求によって最適な透明ヒータを使い分ける必要がある。

3.透明ヒータフィルム(SPETシリーズ)

spet.jpgr4.jpgfk.jpg今回、紹介する透明ヒータフィルムは、透明フレキシブル基板(SPET)シリーズの 1つである。透明フレキシブル基板(SPET)は、写真 1のように透明なサブストレート上に銅箔をラミネートし、配線を描くことで作製する。透明ヒータ以外の応用例は、LED表示器やイルミネーション(写真 2)、透明ドットマトリクスディスプレイ、 5Gアンテナ、ヒューマンマシンインターフェイス、フィルムインサート成型・賦形の 3D基板(写真 3)など多くの採用実績がある。透明ヒータフィルムの特徴は下記 3点である。
① 高透明、高耐熱なサブストレート
② 低抵抗なヒータ線
③ 自由なヒータ設計

3-①.  高透明、高耐熱なサブストレート
サブストレートの全光線透過率が 90.0%と透明度が高い。さらに、透明ヒータフィルムにサーミスタなどの電子部品を実装できるようにリフロー耐熱温度は180℃と高耐熱である。
3-②.  低抵抗なヒータ線
ヒータ線に体積抵抗率が約1.8×10-8Ω・m(20℃)の銅を用いることで、他の金属よりも低い抵抗値である。さらに、シート抵抗値は 1.42mΩ/□であり、一番低いITOのシート抵抗値と比較しても1/10以下の低い抵抗値である。そのためヒータを直ぐに温めることや、低い消費電力で駆動することができる。
3-③.  自由なヒータ設計
ヒータ性能、透過率、耐環境性、制御回路搭載などの要求に対して、自由にヒータの設計ができ、また加工ができる。透明ヒータフィルム上でON-OFFなどの温度制御回路ができることが特徴である。

4.採用事例(ヘッドランプヒータ)

r3.jpgr2.JPG透明ヒータフィルムは、ヘッドランプに後付けするヘッドランプヒータ(写真 4)に採用された。降雪時にヘッドランプの表面に付着した雪が溶けず、夜間のヘッドランプの光が遮られ視界が確保できないという欠点を補うためである。ヘッドランプの光を透過させるため車検対応の全光線透過率75.0%以上とした。ヒータ性能は、停車時や高速道路運転時などの低温環境を -10℃と -20℃と設定し、ヒータ駆動後 1分 30秒以内に雪を溶かし、曇りをとる温度上昇をΔT 30℃以上(図 1)とした。さらに、ヘッドランプヒータが洗車やチッピングによる傷防止や、紫外線や降雨時の耐環境性も付加することで、走行時の安全性にも配慮した製品である。

5.最後に
防曇・融雪対策に必要な透明ヒータは、透明ヒータフィルム(SPET)が飛び抜けて優れている訳ではない。ただ、透明ヒータフィルム(SPET)は、ミリ波レーダ用ヒータ、LiDAR用ヒータ、カメラ用ヒータなど車載分野でも採用され、先進運転支援システム(ADAS)の自動化レベルを上げるサポートをすることで、安心で安全な車社会の実現に貢献している。これは、社会に役立てることができる能力を学び、それが車載メーカに認められた結果であると考える。 透明ヒータフィルム(SPET)は、いい風を吹かせて成功に辿りつけた。新たな挑戦をすることで得られる様々な人との出会いを大切にして、これから活躍する若い人たちに安心して働ける場と挑戦できる機会の提供ができれば、これからもいい風が吹き続けると考える。

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透明基板”SPET”(Super-Polyethylene-Terephthalate)事業部の考え方

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